陰陽道における北斗七星の名称・呼び分け

陰陽道における北斗七星の名称・呼び分け
 
文明社会が生まれてから、人類にとって星座はあらゆる座標を定めるための指針として運用されてきました。
とりわけ重要視されたのが「北斗七星」です。
祭祀や、農作業のはじめ時を表すのは北斗七星の剣先が示す方向でした。
星の巡りを知る手がかりであるこの星座は、「時」や「暦」が政治の領分であった時代には、一般人が時勢を判断する貴重な手がかりだったのです。
 
日本人はかつて、農耕によって繁栄のきっかけをつかみ取りました。
全国的に北斗七星を観測する中で生まれた多様な名称を読み分けてみましょう。
 

日本各地で異なる北斗七星の名称

日本各地で異なる北斗七星の名称
 
農耕には作付時期を見分ける目が大切なのですが、北斗七星の剣先が示す方位、星座の位置、見え方などから判断する習慣が民衆に浸透していました。
現代のように言語が均一化する以前の時代、情報伝達にも長い時間がかかった頃ですから、日本各地で北斗七星にも名称の差異が生まれたのは当然のことなのかもしれません。
 
・北斗
日本に伝わってきた初めの名称とされています。中国からの伝来は推古朝の時代。
ここから天文の発達が始まり、平安期以降民間へも浸透して行きました。
 
・北辰
日本の史書においても「北辰一刀流」などで親しまれている「北辰」とは、陰陽道の祖、古代中国哲学において北斗七星を総称する名称でもあります。
ただし、時に北辰は北極星単独を意味することもあるので、ケースバイケースで確認が必要です。
 
七つを数える北斗七星の名称
・七つ星
・七星天転ばし
・七夜星
・七石星
・七寄せ星
・七星剣(ひちじょうけん)
・七剣星
・しそう(四三)の星
・四三の剣
・七ます星
・七星様(ひちじょーさま)
・ひち(七)曜の星
 
これらは本州の関東以南や離島で確認された名称です。
北斗七星の7つ星を4と3で数える「しそう(四三)」の名称については、主に本州で運用されていたようです。
「四三の剣」は、やはり戦場になることが多かった本州の土地で生まれた名称なのでしょう。
 
星座の形からきた名称
・柄杓星
・杓の柄星
・杓子星(しゃくしぼし・しゃもじぼし)
・桝星
・酒桝
・鍵星
・倉鍵
・立網星
・壺網星
・剣先星
・剣星
 
柄杓、桝、鍵、網といった生活用品に北斗七星をなぞらえる風習は全国的に見られます。
これらの名称の面白いところは、適用される生活用品しだいでその土地の暮らしぶりがうかがえる点でしょう。
酒桝、立網など、酒の生産地であったこと、また、漁業が活発な土地であったことがよくわかります。
北斗七星に「網」を見たのは香川県、そして、岡山県。酒桝は東北地方や九州など。
 
運用法などからきた名称
・作法星
・鬼星
・針刺し星
・針子星
・金突き星
・田の草星
・風車星
・船星
・舵星
・仇星
・破軍の星
・戦星
・輔星(そえぼし・ふせい・ほせい)
・寿命星
 
中でも特異的な名称として「戦星」があります。
かつて戦乱の時代には、北斗七星が戦の命運を占う役割を担っていました。
このために、北斗七星の異名として日本全国に広まったものと考えられます。
「戦星」という運用については日本各地に差異はなく、ほぼ全国に通用する名称でした。
 

現代の「北斗七星」によって占われるものとは

「北斗七星」は平和な現代にも重責を担っています。
陰陽五行の始まりは天文学と切っても切れない関係にあり、北極星(太一)と、太一を含む北辰(北斗七星)であって、陰陽二元が発する原初の「一(はじめ)」だからです。
 
日本神道で別格に定められた伊勢神宮で祭祀を行う日取りを定めるのは、天文における北辰の運行です。
たとえ専門知識がないとしても、北斗七星の浮かぶ夜空をみて分かることもあります。
もし北斗七星がすがすがしく明るければ、陰陽の流れは極大化して万物の流転が活発化するでしょう。その逆もしかり。
天候の影響もあるので確実な占星術とは言えませんが、時勢を判断するひとつの手段にはなるはずです。