春を迎えるための祭祀で「木気」を興す

春を迎えるための祭祀で「木気」を興す
 
「春は、あけぼの。やうやう白くなりゆくやまぎは、少し明りて紫だちたる雲の細くたなびきたる」
 
枕草子の中で清少納言は春の楽しみをこのように綴っています。
 
かつて日本の冬は現代よりも非常に厳しく、体力のない老人、乳幼児にとっては命の危険を伴う季節でした。
大晦日を過ぎて正月を迎えると、季節は木気の春に入ります。
この時期に多くの祭祀が実施される意義は大きく、金気をいかに殺して木気を興すか、祭祀で行われる呪術はそこに集中して選定されたのです。
 

東南アジアの大晦日

 
春よ来い。
早く来いと、呼び込む迎春の呪術には地域差があり、それぞれに色濃い個性が残っています。
日本の陰陽道ともよく親和する世界の国々の中に「ラオス人民民主共和国」がありますが、皆さんは「メオ族」という民族の名前を聞いたことがあるでしょうか。
 
1977年2月に日本のテレビ放送で紹介された「メオ族の大晦日」は特に陰陽五行に叶った術式であるとされ、陰陽師のあいだで印象深く語りつかれているのです。
 
メオ族は大晦日に夕方から呪術を始めます。
 
西の空に沈む夕日に向けて鉄砲を撃ち、次に広場中央に葉のついた気を立て、その根元に農具を伏せる。
また、西の空に向かってニワトリを振って供物として首を切り、生き血を広場に立てた木に塗りつける。
さらに木にしめ縄を張り、村人たちがその下をぐるぐるとまわる。
最後に追羽根を行う。
 
陰陽師の視点を持たない番組の観覧客などにはこれらの呪術がどのような意味を持つのか判らなかったかもしれませんが、陰陽五行の解釈からすれば非常に理にかなった術式であると考えられます。
鉄砲を撃って払う西の空、夕日、夕方と言う時刻、金属の農具、追羽根から首を切るニワトリまで全て「金気」の象徴です。
 
術式の始めに金気を剋して打ち祓い、新たに立てた木を春の「木気」の象徴として神聖化します。
葉のついた木を選ぶのは作物の生育を願う意味を持つのでしょう。
しめ縄が聖性を物語る点は日本国内と変わりません。
 

科学では解決できない「穢れ」

科学では解決できない「穢れ」
 
2015年の調査によって、日本人の平均寿命は女性86.83歳、男性80.5歳と分かりました。
産まれてすぐに死ぬ赤ん坊も、5歳までに亡くなる子供も劇的に減少しましたが、それでも不慮の事故や不治の病はなくなりません。
人の力を超えた災厄が降りかかる可能性は誰にも否定できないのです。
どんなにお金や体力があっても避けがたい不運を避け、幸運を呼び込むためには1月から3月の「木気」に属する期間の過ごし方を少し考え直す必要があるでしょう。
 
翌年の春までがどのような1年になるのか占い、平穏を祈る重要な季節です。
前年の穢れを余している方もいるでしょう。
恋人との関係がうまくいかない。事業に行き詰まりを感じている。
トラブルが絶えないといった悩みを抱えている方がよく占いを利用されます。
 
もちろん占いに厄除け祈願やおはらいを併せることも可能ですが、それよりなにより、まずは生活そのものをよく見つめてみてください。
 

伝統行事の意味

 
伝統には必ず意味があるのです。
初詣の意義をご存知ない日本人はいないでしょう。
大晦日の除夜の鐘から始まる初詣は、前年1年間の無事を神々に感謝するとともに、新たに迎えた1年の幸福を祈るものです。
 
これと同じように、日本人の年中行事に組み込まれた祭祀にはそれぞれ意味があります。
例えば「大祓い」です。
 
大祓いはごく日常的に行われる「お祓い」とは規模が異なります。
基本は夏と冬の年二回実施で、日本人全体の「禊祓い(みそぎはらい)」であり、あまねく穢れを祓い、災厄を呼び込む穢れを落すのです。
別格とされる伊勢神宮では年二回だけではなく、1月31日、4月30日、5月31日、6月30日、10月1日、10月31日、11月30日、12月31日と実施されるので、年始参りが出来なかった方は参詣なさるといいでしょう。
 
厄を祓い穢れを落せば、占いで見える未来も変わるかもしれませんよ。
より明るい未来を引き寄せるためにも、日本の風土が育んだ年中行事にはアンテナを張っていて頂きたいと思います。